好井祐輔「ブラス研修日記」ザ・ウインザーホテル洞爺 Michel Bras Toya Japon
06.07.2004 「ブラス研修日記1」 担当 好井
いよいよ研修が始まりました。日々感じた事や経験した事等を書いていこうと思います。
BRAS
一日目
去年とは打って変わって、スタッフとのコミュニケーションは順調である。ただ、そこに甘えない事が重要である。
まずはパティスリー(デザート部門)に入る。前回とは違ったメニューの数々、知らないものや面白い使い方のものに溢れている。刺激的である。組み合わせや、盛り付けはさすがである。始めて見る世界に出会った、という印象だ。
前日、20項目程度の細かい目標を立てた。それらを一つ一つクリアーして、それを継続させていかなければならない。
BRAS 二日目
この日は中間の休憩時間に「しもつけ草」を採りに行く。これは今の時期にしか花が咲かないそうで、二週間程度で枯れてしまう。
![]() |
車で探しに行き、茂みの奥から花だけを摘むのだ。
フランスの本店でも使用していて、用途は乳製品に合うようで、牛乳の中で香りを抽出して、アイスクリームやムース、牛乳を使ったソースなどに利用している。癖はあるのだが、甘い香りで慣れると癖になりそうである。
ただ、その香りに虫が寄ってくる。持ち帰り、竹串でそれを取り除かなくてはならない。数えただけで10種類もの虫がいた。豊かな自然を感じる。
BRAS 三日目
特に忙しく、昼夜とで110名を越すお客さんの予約が入っていた。レギューム(野菜部門)の助っ人として呼ばれる。去年は落ち込むほどうまく働けなかったが、今年は順調だ。料理の出来上がるまでの手順や、盛り付けを観察しながら手伝いをする。
23時過ぎの帰りのバスから良いものが見えた。満月である。強い光を放っていた。道を照らすライトの様に輝き、月ってこんなに明るかったのか、と感動を覚えた。
ひとりバスに揺られながら微笑んでいた。
帰ってからのビールが格別に思えた。もちろん明日が休みというのも手伝って。
09.07.2004 「ブラス研修日記2」 担当 好井
BRAS四日目(休日)
スタッフのみんなに「旨いものが食べれる所教えて下さい!」と聞いて回ったが、あまり良い回答はなく、が、伊達紋別にある回転寿司ならなんとか、、、というのを聞き、行ってみることにした。
一時間に一本しか無い電車に揺られて四つ目の駅の伊達紋別に降り立った。駅の周りにはあまり何も無さそうな町だが、目的地を目指して歩いていると綺麗に整えられた商店街や大きな店の並ぶ広い通りが見えてきた。少し嬉しくなって、足早に目的地へ向かう。20分くらい歩いた所にそれはあった。12時頃に着いたのだが。お客さんで賑わっていて、カウンターが一つ空いているだけだった。運良くすぐ座れた。並んで待っている人もいた。
活けのつぶ貝・ほっき貝・帆立貝は、注文してから貝から外して握ってくれる。つぶとほっきは少し磯臭かったが、歯応えはよかった。帆立ては特に旨かった。金額は東京で食べると、1・5倍するだろうと思うほど安く感じた。新鮮なものが多く満足した。
伊達紋別の周りを少し歩き、喫茶店で時間を潰し、野菜や日用品を少し買い、豊浦の寮に戻った。
BRAS五日目
今日は三時出勤である。火曜日はディナーからの営業だ。午前中は落ち着かず、読書にも集中出来なかった。去年もそうだったが、どうも慣れない。来週はもっと有意義な時間の使い方をしなければ。本日もパティスリーである。日を重ねるうちに更に面白く感じてきた。やはり、自分の知らないものにあふれているからだ。これだけ多くの素材やありとあらゆる生地を、なんて巧みに使いこなすのだろう。心が踊る。
フランス人の三ツ星のシェフはやはり感性が違う!
絵になるのだ。
BRAS六日目
バスでホテルへ向かうと、霧に包まれ始めた。到着する頃には、2〜3メートル先の視界がない。夏によくある光景らしい。調理場は最上階の11階にあり、片面ガラス張りである。そこから素晴らしい景色が広がっている。最初は気がつくと見とれてしまう程だ。この日は一日霧に包まれていたが、夕方にその霧が晴れ始めた。ホテルが雲の上に浮かぶ様に雲の地面が広がり、その先にだいだい色の夕日が輝くのだ。何とも幻想的な世界だ。その景色で更に気持ちが高揚して、ディナーのスタンバイにも力が入る。
11.07.2004 「ブラス研修日記3」 担当 好井
BRAS七日目
シェフの新作料理の試作を見る機会があった。野菜の旬というのは短いもの。それに合わせて料理を変えている様だ。一度の試作で完成するものや、何日もかけて出来上がるものもあると聞く。
素材の組み合わせだけではなく、量、バランス、美しさなどいろいろな要素が必要である。小さなレストランでは、その日仕入れた素材でその日だけのメニューを作る事が出来るが、ここのようなグランメゾンはそういう事が出来ない。
この時期常に満席なので仕入れる素材の量が違う。一つのメニューとしてラインに乗せなければ、ロスも多く成り立たないのだ。完成度の高さが不可欠である。今日の試作では納得いかなかった様だ。
結局完成に二日間かかった。牛肉・キヌサヤ・茗荷・ライムにピスタチオのピュレを合わせた一皿が出来上がった。
BRAS八日目
本日パティスリー最終日。ようやく先が読める様になってきたところだ。凄く勉強させてもらった。
今回の研修に向けて、少しはフランス語を勉強したつもりだが、話にならない。数字や料理名とちょっとした会話だけだ。耳には入ってくるが、意味として脳には届かない。
今年の研修を去年以上にするために、シェフにフランス語で手紙を書いて渡した。
前回で得たもの。そして、それによって料理人としての感性を変えてもらい、これから目指すものや、今回の意気込みを伝えたかった。
それは読んでもらって伝わったはずだが、その後のコミュニケーションが余り取れずにいる。頑張らなくては!少しずつ距離を縮めていきたい。
BRAS九日目
今日からガルドマンジェだ。基本的に冷たい食材を使うところで、オードブルが中心である。
最初はハーブの準備。ここの料理にはハーブを使わないものはない、というぐらいなので、この時期使っているハーブの種類は信じられない程多い。ハーブと花だけで20種類を超える。
よって、一日の半分ぐらいをその時間に割いた。しかも今日は中間時間に三種類の野生のハーブを車で採りに行った。車道の脇にたくさん生えていて、知らなければただの雑草である。自然とその野草を使った料理をするという事にひたすら感動する。
東京にいれば見る事のない昆虫を観察しながらハーブをちぎる。子どもの頃に埋めたタイムカプセルを掘り出した様に、ゆったりとした無邪気な気持ちを思い出した。そんな感覚だった。
14.07.2007 「ブラス研修日記4」 担当 好井
連続で好井のレポートを掲載しています!ホント携帯のメール機能で書き込んでいるわけだから感心しています。最近まで携帯を持っていなく、メール書くのにも相当な時間をかけていたのが、変われば変わるもので、やはり環境が激変すると成長するもんです。
打ってる姿が眼に浮かび、その前に、たぶん紙に、何度も書きなぐっていると思います!
他のスタッフは好井が居ない分、1.5倍から2倍ぐらいの仕事量をこなしているので、とてもダイアリーを書く余裕は無いようです。
この様な経験が明日の糧となり成長していくものだと確信していますが、僕自身も最近「体の節々が痛んでいて」大黒湯の「電気風呂」や「サウナ」や針治療など行って体調を整えている今日この頃です!(藤野)
BRAS十日目
今週の最終日である。ガルドマンジェはパティスリーよりもやる仕事が多く、サービスが始まると常に体を動かす。一皿の料理を作り上げるのに時間が掛かるものが多いので、仕上げる直前まで準備しておく。合図がサービスマンからかかり一気に仕上げる。冷蔵庫から出したての冷たい料理を嫌う様で、皿も冷やさない。そこに自然を求めるこだわりを感じる。
BRAS十一日目(休日)
本日二度目の休みである。
まずカニ飯を食べに長万部へ行くことにした。朝、駅に行くと、次の電車まで2時間半以上待たねばならない。先週行った方向とは反対側で、更に電車の本数が少ない。時刻表を調べておけば、、、!と後悔は募るがもうしょうがない。諦めて読書にふける。
待ちに待った電車に乗り込み、長万部へと向かう。40分程の道のりだ。噂どおりカニ飯以外見るところは無さそうだったので、すぐに店ののれんをくぐった。カニ飯が有名なわりには駅前に一軒しか無いっていうのも変だなと思いながら席についた。
テーブルの上にはメニューの他にカニ飯が有名になった経緯などが細かく年表を添えて書いてあるものが置いてあった。カニ飯以外の定食やラーメン等もたくさん種類はあったが、迷わずカニ飯セットを頼んだ。
やはり有名なのかどんどん席が埋まる。期待は更に膨らむ。目の前にそれが運ばれてきた。重箱に入っていて、それを開けると予想とは違い、カニと竹の子が甘めに軽く炊いてある褐色の、例えるならばちらし寿司に乗せる桜でんぶの様なものだった。
味は普通だった。実はここを教えてもらった時「あんまり期待しないでね」と言われてたし、戦後に駅弁として売り出したのがきっかけだったと書いてある。なるほどと思い、店を出て駅へ向かった。
長万部50分の滞在である。味の善し悪しより、旨いものを求め遠出したという事に満足した。
夕方はスタッフの人達にバーベキューに誘ってもらい、ジンギスカン風のものや新鮮な海の幸などをたらふく食べ、ビールで幸せな時間を過ごした。
北海道の人はバーベキュー好きの様で、大きなスーパーのバーベキュー売り場の豊富さに驚いた。
それと気付いたのは、どこの店を見てもそうだが、北海道で取れた食材を大切にしていて、野菜や魚介は道内産の物が特に多い。本州からだと送料が高いにしても、とても良い心掛けだなと思った。
17.07.2004 「ブラス研修日記5」 担当 好井
BRAS十二日目
本日十五時より。
昨日の酒と生活に慣れてきた事もあり、午前中はゆっくりと、買い物やフランス語の勉強などをして過ごした。今回はカストールのスタッフに炊飯器や鍋、食料品などを送ってもらったので、昼は部屋でパスタを作った。
ガルドマンジェ(オードブルを中心に作る部所)にも慣れ、任せてもらえる仕事も出来たので緊張感を持って取り組めた。
BRAS十三日目
今日はディナーから先週試作した料理にメニューの変更があった。
こつを掴むまでは大変なので、他の仕事がたくさん回ってきて、いつも以上に仕事に満足感があった。
ハーブや花などを作ってもらっている農家の所に週に二回程取りに行っているので、明日の同行をお願いした。
BRAS十四日目
朝七時に寮を出発し、ハーブを作ってもらっている農家へ同行した。
僕は初めてだったので、ハーブを摘みながら、いろいろと説明してもらった。
ここの農家の方は、会社を退職されたあと趣味でハーブや花を作る様になり、それが転じて少しずつ小売りしている。
ミッシェル・ブラスのオープンの時からたくさんの種類のハーブや花をお願いしている。ミントやバジルだけでも四種類ずつ育ててあったり、人工の小川の様なところには、クレソンが広がり花を咲かせていた。とても強い香りの漂う畑で、蜂の羽音も心地よく感じた。
久しぶりの青空と土やハーブの匂いを思いきり吸い込み、自然と優しい気持ちになり、何処か楽しく、ほほえみがこぼれていた。なんて気持ちのいい朝なんだ!
今日は中間時間にも、この前ハーブを取りに行ったところへ行った。
ヒメオゼイユ、ハコベ、オクサリの三種類を持って帰った。植物の香りをたくさん感じた一日だった。
ディナーのサービス中には、パティスリーに呼ばれる。
18.07.2004 「ブラス研修日記6」 担当 好井
どんどん佳境に入ってきた好井レポートですが、後残り10日前後となりました。さてこれから彼はストーブ前に移って行くと思います。
本当の評価はこれからなのです、将来は!
二年連続でレストラン「ブラス」にお願いしていますが、ザ・ウインザーホテル・トウヤの皆様にも感謝しています。
Chef M.Alexandre BUUDAS の度量がなければ有意義な研修は不可能ですし、M.Michel BRAS の意思が脈々と流れていることを感じます。
フランス国内でもこの様なシステムで受け入れてくれる所はそう探しても無い事を読者の皆さんも判ってて下さい。
好井が受け入れてもらった背景には、技術的もの文化的なものに、ある種共有する部分を感じ取ってもらったからだと思っています。
カストールの残ったスタッフも「頑張って!」やっています。いずれ私も・・・・・が、そうは上手くゆくかどうか?
11月19日から28日までM.Michel BRAS本人が本店のスタッフを引き連れてフェアを開催いたします。
毎年この期間にツアーを主催して今年も行きます。
ほんと美味しくて癒されて2泊3日を過ごします。楽しみです!(藤野)
BRAS十五日目
今日はスタッフの休みが重なり、パティスリーに入る。
ある程度仕事の流れは掴んでいるので、ミスがない様心掛けた。
これだけスタッフが休んでも難無く仕事を進められるところに、層の厚さを感じた。
三ツ星レストランとはこういった感じなのだろうか。町場のレストランとはシステムが全く違う。しかもホテルという大きな組織であればなおさらである。
調理場のスタッフがシェフも合わせ16人。四つの部所に別れ、その中で更に仕事を分担している。ただ、その部所の中の仕事は全ての人が出来る様に仕事を回すのだ。
それが常に満席のレストランの安定した質と抜群のタイミングを保てるのだ。
BRAS十六日目
ガルドマンジェ最終日。今週末は連休とも重なり、ホテル全体が忙しい。BRASも土・日曜と目一杯入ってる。さすがに仕込みが多い。
サービス中には、盛り付けなども出来る様になり、ガルドマンジェの仕事はひと通りやらせてもらった。
ハーブの知識や扱い方は去年以上に身に付いたし、自然の素晴らしさを肌で感じる事が出来、ハーブに愛情を持てるようになった。それが一番の収穫である。
多くの料理人にとって、食材に優しく対するという事は出来そうでなかなか出来ない,とても大切な事だと信じてる。
それを感じることが出来た
21.07.2004 「ブラス研修日記7」担当 好井
BRAS十七日目
今日よりレギューム(野菜部門)。緊張する。なぜなら去年はうまく働け無かったからだ。
扱う野菜の種類の多さと量に正直戸惑い、知らない事が多すぎ、恥ずかしながら包丁が切れない。
悔しくてしょうがなかった。(去年の研修を終え、何よりも先に包丁屋に駆け込んだくらいである。)
今年は準備してきた。カストールで使う野菜も去年から3倍程に増やし、河岸にも足を運び、何よりも、野菜と優しく接してきた。もちろん使える包丁も持ってきてある。
前回とは違う。
コミュニケーションを取れているという余裕もあってか、戸惑いが無い。落ち着いて仕事に打ち込めた。
サービス時間中は盛り付けの手伝いである。
シェフの横で皿を出したり、必要な食材や調味料を準備し、簡単な盛り付けをする。
この日は特に忙しかったが、うまく動けた。
ただ、一つだけうまくいかなかった事が有った。
それは、帰る時にシェフに挨拶ついでに簡単なフランス語で一言伝えてみた。が、しかし通じて無い。首をかしげている。
自分なりに辞書で調べ、忘れぬ様紙に書いておいた。それを見せたが、困った顔で一つの単語が分からない、と言われてしまった。
こっちも困った。それ以上何も出来ず、帰るしかなかった。通じ無かったのは悔しいが、失敗してもいいから次に頑張ろうと思えた事が収穫だった。
BRAS十八日目(休日)
今日はレストランを予約してある。
近場では有名な所で、この時期混んでいるらしい。ちなみに、先週に予約を試みたが取れなかった。ブラスのスタッフにそこで以前働いていた人がいて、その人に紹介してもらったのだ。
マッカリーナというレストランだ。真狩村(まっかりむら)にある。真狩温泉と世界のユリ園とが同じ敷地にある。集客力がありそうだ。
隣りには小さな宿泊施設がある。レストランへ入ると大きなウエイティングルームになっていてお洒落な囲炉裏がが有る。
窓が多い店内で、中庭から光を取り込んでいるため明るくて、テーブルは窓際に並び、青々と茂る木々を見ながら食事が出来る。
良い雰囲気だ。光の差し込む森の中にテーブルを持ち込んだ気分である。シャンパンを格別に美味く感じさせる。昼間の酒は最高だ。
地元の野菜が中心の美しい料理の数々。
特に感心したのは、スペシャリテのたくさんの野菜と魚介を合わせたオードブルを食べ終えた皿に、茹でたてのブロッコリーが運ばれてきた。
朝取りの新鮮なものだ。二種類のソースも添えてある。お客さんの心を上手く掴んでいる。良いレストランである。勉強になった。
帰りにニセコへ行き、その近くの湧き水が出る所でおいしい豆腐を買い、こちらも湧き水が有名な京極という所に連れて行ってもらった。
連れの人にいろいろと気を遣ってもらい、楽しい時間を過ごせた。感謝である。
車中から見える景色は果てしなく続く畑である。その中でも感動したのが、小麦畑だ。本等で「黄金色に輝く小麦畑が広がり、、、、」などというのは読んだ事があった。しかし、ここまで美しいとは想像していなかった。まさに黄金色であった。[風の谷のナウシカ]を思い出した。
夕方には、他の人達から釣りの誘いを受けて、先週行った長万部の先の所で釣りをした。
あいにくの雨に打たれ、寒かったが、なんとか一本釣った。
小さなシマソイである。釣りのやり方を忘れてしまっていたぐらいなので、釣れたことで興奮してしまった。
四人で行って七尾釣れた。良い経験をさせてもらった。全部小振りのシマソイだったので、全て頂いて帰ってフライパンで焼いて食べた。
新鮮だから流石に旨かった。
24.07.2004 「ブラス研修日記8」 担当 好井
BRAS十九日目
午前中はゆっくり休み、午後からホテルへ向かう。ここのところ天気がよくない。
毎日雲っていて小雨が降ったり、時折雲の切れ目から太陽をのぞかす程度だ。決まって、帰る頃には霧に包まれる。視界がない。慣れないと車には乗れないだろう。
今日も相変わらず満席である。必ず、前日以上の仕事・動きを求めるようにしている。残すは十日程。より多くのものを吸収しなければ!
BRAS二十日目
レギュームにもだんだん慣れてきた。
この場所は、ミッシェル・ブラスの全てが詰まっている、スペシャリテの一皿を作っているところだ。
ここの人はミッシェルブラスの野菜に対する思い入れ、感覚をよく理解している。だから、興味深い話をたくさん聞く事が出来る。どんどん質問している。
今日は久しぶりの快晴だ。厨房からの景色が違う。どうも窓に目がいく。写真に撮れないのが残念に思う。何度、目にしても飽きない美しさがある。スタッフの皆も自然と笑顔が多くなる。
ここの厨房は片側がガラス張りである。
中間時間に今日もハーブを摘みに連れて行ってもらう。
いつもより休憩時間が長いので、洞爺湖の湖畔を歩き、花を観察し、この美しい景色に酔いしれる。帰り道に有る、お店でアイスクリームを食べた。
休日の様な気分で、「このまま家に帰ろうか!」等と、冗談を言いながらホテルへ戻る。
厨房に戻ると、一番年輩のレギュームの人がたくさんのキノコを採ってきていた。段ボールいっぱいだ。去年、キノコ採りに連れて行ってくれた先輩である。
やまどりだけと言い、フランスではセップ、イタリアではポルチーニと言う。種類は同じながら、国が違えば香りが違う。
日本のものはほとんど香りが無い。しかし味は変わらない。まあ、ポルチーニは香りを食べてるようなものだが。
一つ頂いて帰って、バターで焼いて食べたのだ。旨い!ビールが進む。
BRASニ十一日目
今日はレギューム担当が一人少ない。気合い十分である。
今日の中間時間は、昨日キノコをもらった先輩にキノコ採りに連れて行ってもらった。
実はこの人、北海道の[キノコの会]に入っていて、キノコはもちろん山の植物にも特に詳しい。博士みたいなものだ。
車で40分程度、春から目を付けていたという山に到着。
頭にはタオルを巻き、厚手のてぶくろにビニール製の上着に身を包み、いざ入る。しかし、無い。何度も場所を変え、険しい所に入るも空しく、一つもない。毒キノコしかない。
名人でもこういう事はよくあるらしい。木の種類と成長具合、植物の生え方、陽の当たり方等。いろいろな条件が重ならないと生えていないらしい。自然の難しさだ。
流石に諦め、山を下った。
残り時間が少なくなり、少し肩を落としホテルに向かう。一カ所だけ寄り道をした。
去年一本だけセップが出た所があるようだ。あまり期待しないで車を降りた。
入った瞬間、先輩が叫んだ。4〜5本生えている。有るものの、大きくなりすぎていて、虫食いや溶けかけているものがあるので、食べれるのは二本だけだ。
少し興奮して、他を当たる。が、無い。帰ろうとした時に、もう一度さっきの所へ行ってみた。
今までは先輩に置いていかれないように後ろに付いて歩いていたので、自分で見つけた事もなかった。だから興奮した。
自分で発見したのだ。探していた宝物がやっと見つかった。
全部で七本。大きいものは、手のひらを思い切り広げたぐらいある。
つい、にやけてしまう。旨かった。
サービス中は満足の行く仕事が出来た。
27.07.2004 「ブラス研修日記9 」 担当 好井
BRAS二十二日目
毎日仕事が楽しみだ。実を言うと、去年は憂鬱な日があった。
今年はそういう日が無い。コミュニケーションと何しろ野菜の事が分かる様になってた事が大きい。
理解していると、求めている事がある程度分かる。この手応えが欲しかった。
毎日、何かを必ず自分のものにし、残り時間を大切にしたい。
BRAS二十三日目
レギューム最終日。スピードと正確さを求め、仕事に取り込んだ。
研修生として緊張感がある。誰よりも早く、かつスマートに動く事で皆に認めてもらえる。
カストールの皆も頑張ってくれている。僕だけ特別な一か月という夏休み。シェフよりも長い。
ここでもう一度気を引き締め、一つでも多くのものを取り込み、技術や知識だけでは無く、これから続けて行く料理人としての人間性をより豊かにして、帰りたいと思う。
BRAS二十四日目
最後の場所、ショー(温かいという意)。肉と魚を扱う。
フランス料理のイメージからすると一番重要で忙しい場所だと思う。
しかしこの場所は人数が少ない。実質二人である。
肉や魚介の下処理から焼いたり蒸したり、ソースを作り、皿に盛り付ける直前までを用意する所だ。
もちろん、重要であるからベテランが任されている。だから研修生がやらせてもらえる仕事は少ない。
よって、他を手伝いながら見て学ぶしかない。ただそれも大切な事だ。
BRAS二十五日目(休日)
研修中の休日としては最終日。あいにくの天気だった。
早朝と夕方過ぎに雷雨である。一時、停電に見舞われる程度だ。ただ、嵐の後の晴天が数時間有った。
今日は昼にホテルの[わく善]という寿司屋に予約してある。皆に聞く限り評判が良い。
丁度天気が良い頃で、部屋で支度をし、バスに乗ろうと思い寮の玄関へ行く。が、バスは今出た所だった。
バスの時間を勘違いしていた。昼間なのでこの後のバスは三時間後しか無い。
タクシーを呼ぶか、ホテルへ向かう従業員の人の車に乗せてもらうしかない。待ってると、ホテルへ向かう人がいて、その人にお願いした。嫌な顔一つせずに引き受けてくれた。(嬉しくてカイザーのパンでお礼をした。)
予約の時間まで、ホテルの中を見て回り、ブラスのブティックで本を買った。
少し緊張していた。高級な寿司屋に行った事が無い。
若い職人さんには八千円のコースを注文しておいたのだが。
綺麗なカウンターで、気持ちの良い職人さんだ。まずはビール。気の利いたお通しに続き、寿司が一貫ずつ握られる。
綺麗な仕事である。ここの主人ではないが、見てるだけで楽しい程の仕事ぶりであり、物知りできびきびとした口調が良い。
やはり値段がいいとネタとシャリも流石である。
初めての高級寿司屋なので当然だが、こんな寿司は初めてだった。ネタはもちろんだが、なにしろバランスが素晴らしい。特に旨かったのは軽く炙ったホッキ貝。本物を味わった様な気がする。
寮に戻り、今度は電車で伊達紋別へ行こうと思った。
どうも今日はツイてないらしい。電車の便の少なさは思い知らされていたので、きちんと携帯に入力して置いたのだが、確認したのは反対方向行きの時刻表であった。
特に用事があった訳ではないので、自分に溜め息をつきつつ引き返す事にした。少し散歩をしたのち部屋で終日読書をして過ごした。
帰って2〜3時間後にまた嵐がきたので丁度よかったかな、と思いながら、、、
30.07.2004 「ブラス研修日記10」 担当 好井
BRAS二十六日目
本日午後から。
午後から仕事に向かうというのも最後である。
ディナーだけの準備なので余り仕事が無く、忙しそうなポジションの手伝いに回る。
今回は、普段なかなか読まない本をたくさん読めた。
BRASニ十七日目
朝から百枚以上の殻付帆立貝を掃除し、続いて四十個のつぶ貝。
大きいレストランは仕入れる量が違う。流石に若いスタッフの仕事も早い。負けじと頑張る。
感心させられたのは、若いスタッフの目付きや意識である。
スタッフのほとんどが三十才前後で経験豊富であり、レベルが高い。その中に高い競争率を乗り越えた新人が入ってくる。
そしてどんどん仕事をやらせる。周りの影響も手伝って意識が高まる。
良い傾向だと思う。十五年以上のベテランも二年目も同じ仕事にとり組む(全てのポジションではないが)。
きちんとしたシステムが確立されているこそ出来るのだ。いろんな意味で勉強になっている。
若いスタッフともたくさん接してきて、良い刺激をもらったので、カストールの若いスタッフに「伝えるもの」を忘れず持って帰らなければ!
BRASニ十八日目
毎日書いているつもりであったが、一日書き忘れたのか、日付を重複してしまったのか、今頃気付いた。今日は二十九日である。少しショックだ。
自分にとって忙しく、充実した一日であった。
朝からたくさんの仕事が有り、ストーブ前での仕事も少しやらせてもらい、全部ではないが、シェフの賄いを作った。
短時間で出来る、サルティンボッカである。イタリアンなのだが、突然の事だし、有る材料で簡単で自分が好きなものを探したらこれが出てきた。
考えて見るとこの一か月、一から料理を作り上げる事が無かったので、なんだかとても楽しかった。
BRAS二十九日目
早いもので、残すところ後二日。吸収出来る限りのものは、目と体、そして頭に詰め込んだつもりだ。
その多くのものを、自分というフィルターを通して形にしてみたい。
それが、僕を送り出してくれたシェフへのお礼であり結果(成果)だと感じている。
それを意識して、最終日を過ごしたい。
何よりも嬉しかったのは、皆が仲間として接してくれた事だ。サービス担当のスタッフにもいろんな事を教えてもらい、キッチンのスタッフは「北海道においでよ!」とまで言ってくれた。
去年は弱かった繋りを、太く丈夫なものに変える事が出来た。これを育て、財産にしたい。
明日が最後だ。
31,07,2004「ブラス研修日記11」最終稿 担当 好井
BRAS最終日
ついに最後を迎える。
いつも通り、自分の出来る事を一生懸命やった。シェフとのコミュニケーション以外は思い残す事は無い。フランス語は東京に戻って、また一から始めるしかない。
ただ、それを頑張るための薬はたくさんもらってきたから、この先に懸けるしかない。課題も見つかった。やるべき事が多くてワクワクしてきた。我ながらプラス思考ぶりに感心する。僕の取り柄だと思っている。
一日の仕事を終え、皆に挨拶をして回った。去年には無い気持ちが込み上げてきた。
しっかりと握手を酌み交わし、再会を誓った。どうもこういうのが苦手で、目頭が熱くなる。
シェフのアレックスにもフランス語で手紙を書いて渡した。
ホテルを後にした。満月の素晴らしい空だった。
後は、この一か月のまとめをもって、北海道からの日記を締めくくりたいと思う。
BRASまとめ
一か月間日記を続けてきました。今まで日記は嫌いで、続いたためしがありませんでした。
二度目の研修という事で、何か違う事をやらなければ、という思いと、カストールのスタッフへ感じたものを伝える事で、良い刺激を与えたい気持ちで始めました。
もちろん去年から始めたホームページがあったからこそであります。なにしろ携帯のメールで送ってきましたから、パソコンの画面にはどのように映っているのか知りません。
読みにくい文章もあったと思いますが、続けて読んで頂いた方には感謝しています。
多くのものを見てきて、発見・刺激を感じる事が出来ました。
去年もそうだったのですが、帰ってきてすぐに成果が出た訳では無く、料理と接する毎日の中で少しずつ芽を出しました。
堅くなった畑を耕し、肥料(有機)を入れて帰ってきた様なものです。今回もそういった意味での春がたくさん訪れる事を期待しています。
自然と強く触れ(あのキノコ[セップ]の感動は忘れません)、優しく豊かになれた気持ちを、東京にいても、自分の一部に出来る様に努力していきます。
そうでないと<M.Michel BRAS>に失礼だから。
以上、研修日記でした。
八月一日 好井祐輔